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難病を10年生きた母と、母を亡くした父の10年。ふたつの“生きがい” 前編|母の場合

2月12日
読了時間: 6分

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2014年、母を看取り、

その10年後に父を看取ったわたしは

実家でもあったマンションを手放すことにした。

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そのマンションに引っ越してきたのは わたしが20歳の頃で

母は「人間関係の煩わしい団地生活からやっと解放された」

と 喜んでいた。

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父と母、わたしと弟の四人暮らしは 5年ほど続いた。

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最初にわたしが家を出て、その後 弟も一人暮らしを始め、

その数年後に母が亡くなり、最後は 父が一人で暮らしていた。

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形を変えながら散っていく家族の一部始終を、

そのマンションは 見ていたのだろうか。

団地暮らしだった頃。弟が生まれて。
団地暮らしだった頃。弟が生まれて。

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母は55歳の時に難病に倒れ、

入退院を繰り返しながらその後10年生きた。

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ある日の病院帰り、

神戸の山手にある老舗の帽子屋さんに 二人で寄った。

母は、花飾りがついた深い紫の帽子を買った。

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立派な箱を抱えながら並んで歩くわたしに 母は

「こんなの買って、わたしまだ生きたいんやね」

と 言った。

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それから数年間、

母が何度その帽子を被って出かけたのかはわからない。

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それでも、

年ごとに 日に日に 弱っていく

自身の体も 運命も

呪うことなく ぼやくことなく

母はいつも 少女みたいにニコニコしていた。

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杖をつき、車椅子になっても、

美味しいものが好きで

新聞の広告やテレビショッピングを見ては

通販で特産品を注文してみたり

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わたしが出かけるときは

「四興楼の豚まん買ってきて」とか

「朝日堂のみたらし団子買ってきて」とか

そんなことを頼まれたものだ。




母が大好きだった朝日堂のみたらし団子。棺桶にも入れた。
母が大好きだった朝日堂のみたらし団子。棺桶にも入れた。

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ほとんど家で寝たきりになってからも

「今日は、目玉焼きにしてもらおか」

と 母のリクエストで朝が始まるのも

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亡くなる直前の日々

病院のベッドから

「だし巻き作って持ってきて」

と 携帯メッセージが入るのも

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「あ、母はまだ生きてる」と

そう思えて 安心したのを覚えている。

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だけど そのほんの数日後、

「もうだしまきいりません」

それが、母からの最後のメッセージになった。

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だし巻きが食べれなくなった母が

最後に口にしたのは メロンだったか 桃だったか

口に運んだそれを そっと拒んで

「もういいわ」と 力無く 言って

眠りなのか 昏睡なのか 母は目を閉じた。

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あとは 死に向かうための過酷な数日間だけがあった。










母はその時まで 一言も

「辛い」とか 「苦しい」とか

たった一言も 漏らすことなく

ただニコニコと 美味しいと思うものを食べ

「ありがとう」と言い

​

もう、ほとんど生命は 

その体に残ってはいないのに

車椅子を押すわたしに

「みて、あそこ花咲いてる」と

​

それは、誰のための言葉だったのだろう。





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死んでいく自分を感じながらも なお

病院という 閉ざされた白い空間の中でさえ

目の前にある何か

美味しいもの 美しいものを

見つけ続けた母。

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それが 母の「生きがい」だったのかどうかはわからない。

だけど一つだけ言えるのは

母は 「生きがい」を感じる天才だったということ。

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母が買ったあの帽子は

10年後、父が亡くなった時に棺桶に入れた。

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スーツを着せた父の手元に

朝日堂のみたらし団子と一緒に。

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天国でまた 父と

時々ケンカしながらも

「おいしいね」とか

「あ、花が咲いてるね」とか

言っているのかもしれない。

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わたしもまだ もうしばらくは この地上で

何があっても この体があるうちは

「美味しいもの」を

「美しいもの」を

見つけ続けていこうと思う。

​

母のように。






母と父。結婚式にて。
母と父。結婚式にて。

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母の生き方を見ていて思う。


「生きがい」って

何かを成し遂げることでも


誰かの役に立ち続けることでもなく

​

ただ 目の前にあるいのちを

それを感じられる自分を

楽しむ 愛おしむこと。

​

それは決して

特別なものでも 豪華なものでもない。

​

小さくて ささやかで 

取るに足らないように思える 何か。

​

アタリマエすぎて 

見えなくなりがちな 何か。

​

そんな「何か」にこそ

わたし達は 生かされてる。

最後まで。

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そのことに気づけたら…。






IKIGAIは、どこか遠くに探すものではない

修行して磨くものでもない

​

ただ ここにあるのだ と 

ずっと ここにあったのだ と

知るだけで

​

アタリマエが 奇跡であることが

昨日と同じ今日など ないことが

見えてくる。

​

あなたが どこにいて 何をしていても

あなたの あなただけの「IKIGAI」が

そこから 花開き始める。

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家族がいて、笑顔でいれば、それだけで。
家族がいて、笑顔でいれば、それだけで。

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次回は、母を亡くした後の、父の生きがいについて。

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もし、あなたが

「自分のIKIGAIがわからない」と感じているなら…

​

それは、まだ見つかっていないのではなく

言葉にならない状態のまま

胸の中に散らばっているだけかもしれない。

​

IKIGAIを 自然に味わえる人もいれば、

立ち止まって、並べて 眺めてみることで

気づいていく人もいる。

​

「美味しい」「美しい」「大好き」

日々の中にある小さな宝物達を

ビジュアルでコラージュする【IKIGAI MAP】は、

「あなたの一番の幸せ」を生きるための

「地図」であり「羅針盤」。

​

「将来の夢」や「目標」を描いて叶えるのではなく、

「今ここにあるIKIGAI」を感じて、取り出し、見つめていく。

​

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あなたと出逢えること、楽しみに。 愛を込めて。 今回のライター|船戸愛











「すべての命が愛と才能を発揮・循環する世界」 =「お金のいらない国」を目指して 2024年7月、ビジネス→ギブネスにシフト。

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「今わたしにできる最も価値のあることを無料でやる」

「困ったときは助けを求める」

「人を変えようとしない」

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シンプルなこの三つの原則で、

わたしと世界が、どんなふうに変わっていくか?​ 楽しく人体実験中。 地球上の肩書きは、 コピーライター、コーチ、 ひふみ・IKIGAI村役場お祭り担当、 WorldShift WAちゃらぼ!運営、などさまざま。

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