子どもの頃、“死” が怖かった。
「死んだら、どうなるんだろう」…
“わたし” という存在が、どこへいってしまうのか。
考え始めると、
深い闇の底へと沈んでしまうような感覚がした。
怖かったのは、“わたしの死” だけではなく
“母の死” もまた、圧倒的な恐怖の対象だった。
特に幼い頃は、それを象徴するように
母が死んでしまう夢をよく見た。
泣き叫んで目が覚めると
隣で寝ていた母が「大丈夫、夢や夢や」、と
背中をさすってくれたことを、今も覚えている。
そんな母を10年前に看取り、
母が亡くなった後の10年を一人生きた父を看取り、
さらには、もう40年も前
10歳になる直前で兄が亡くなる瞬間を目の当たりにして
想うことは、
「人は、必ず死ぬ」ということ。
だからこそ、
「生きることが、輝く」ということ。
![セピア色の家族写真](https://static.wixstatic.com/media/8dd9fb_75c35fba70cb490cabdfa228a2e79af8~mv2.jpg/v1/fill/w_980,h_694,al_c,q_85,usm_0.66_1.00_0.01,enc_auto/8dd9fb_75c35fba70cb490cabdfa228a2e79af8~mv2.jpg)
わたし達は、日々の忙しさに追われる中で、
「死」という現実から目を背けがちです。
だけど、「人は、いつか死ぬ」という不変の事実は、
どれだけ無視しようとしても、
誰もが、必ず、向き合わなければならないこと。
死を
「背後から付きまとう恐怖の対象」として
忌み、避け続けるのか。
それとも
「命の本質を明かしてくれる鍵」として
目を凝らし、受け入れるのか。
どちらを選ぶかによって
わたし達の日々の感じ方、人生の捉え方は大きく変わってきます。
“死”を意識することは
“生きること” の意味を深く問い直すこと。
今回のコラムでは、
“死を意識すること”が 、どのようにわたし達の生きがいを明確にし、
充実した人生に導くのかを探ります。
1. 生きがい 看取り ~死を意識することで浮かび上がる命の輝き
![境界に佇む男性](https://static.wixstatic.com/media/nsplsh_6f4c646d376d6e68446963~mv2_d_5891_3933_s_4_2.jpg/v1/fill/w_980,h_654,al_c,q_85,usm_0.66_1.00_0.01,enc_auto/nsplsh_6f4c646d376d6e68446963~mv2_d_5891_3933_s_4_2.jpg)
「死とは何か」という問いは、
「生きるとは何か」という問いと同じように
わたし達にとって、最も根源的なもの。
特に、“看取り” は、
この問いを深く考える機会ではないでしょうか。
“看取り”とは、大切な人が最期を迎えるその瞬間に寄り添い、
その生を、最後の瞬間まで共に見守ること。
この過程で、“看取る人” は “看取られる人” と共に
死を迎える人の人生を振り返り、分かち合います。
今まで、どのように生き、誰に どれほど影響を与え、
どのような愛や絆を築いてきたか…
一生分の過去を振り返りながら
残された日々の中で、最大限に愛と感謝を交わし合う。
死が目前に迫っているからこそ
「今、この人と過ごすこの時間」が
どんな瞬間よりも、輝きを放ちます。
人は、いつか、大切な人を看取ります。
そして、いつか、大切な人に看取られます。
その瞬間まで、“今ここ” を、どう生きるか。
“看取り” の時間は、
大切な人と紡ぎあった愛や絆、
それらが織りなす “人生の意味=生きがい” を
浮き彫りにしてくれるのです。
2. 看取りの文化とその独自性
![年老いた女性の手を握る](https://static.wixstatic.com/media/11062b_6b48b28f794b425eab23eaf5734a8e41~mv2.jpeg/v1/fill/w_980,h_653,al_c,q_85,usm_0.66_1.00_0.01,enc_auto/11062b_6b48b28f794b425eab23eaf5734a8e41~mv2.jpeg)
「看取り」とは、単なる医療的なケアや形式的な対応ではなく、
愛情や感謝、別れの悲しみといった多くの感情が込められています。
驚くべきことに、
「看取り」という概念を他の国と言語で表そうとすると、
完全に同じニュアンスを持つ一語が見つからないのです。
例えば、英語では
"end-of-life care" や "dying with dignity" という表現がありますが、
これらは主に医療や倫理の側面を指し、
看取りが持つ家族的・情緒的なつながりまでは含まれていないようです。
フランス語では
"accompagnement de fin de vie"(人生の終わりへの伴走)、
ドイツ語では "Sterbebegleitung"(死の付き添い)という言葉がありますが、
これらもまた文化的背景が異なり、
日本の「看取り」が持つ独特の親密さや情感をそのまま表すものではありません。
命の尊さを分かち合い、最後の時間をともに過ごすことで、
亡くなる人に寄り添いながら、
自分自身も人生を深く感じる特別な時間「看取り」。
「看取り」という言葉は、「生きがい」と同じように
日本文化を深く映し出す独特な概念なのかもしれません。
3. 看取りの背景にある日本の“死生観”
![苔むした地面のお地蔵さん](https://static.wixstatic.com/media/nsplsh_4f516270706a66356f7563~mv2_d_4641_3094_s_4_2.jpg/v1/fill/w_980,h_653,al_c,q_85,usm_0.66_1.00_0.01,enc_auto/nsplsh_4f516270706a66356f7563~mv2_d_4641_3094_s_4_2.jpg)
日本において「看取り」が特別な意味を持つ理由は、
家族や共同体の結びつきを重んじる文化だけでなく、
“独自の死生観” にあります。
仏教や神道、アミニズムが日常に根付いている日本では、
死が単なる“終わり” ではなく、
“次の段階への移行” と捉えられることがあります。
“肉体” としてのその人の命は“終わり” を迎えるけれど
“魂” としては、生き続ける。
亡くなった人にはもう触れられないけれど
その魂は、お墓や仏壇の中にだけあるのではなく、
木々や花、空や風、星々の中に、
そして、わたし達一人一人の命の中に、ある。
共に、生きている。
途切れずにずっと、続いていく。
そんな感覚を持っているからこそ、
わたし達が「生きがい」について考える時、
それは、「わたしの生きがい」であると同時に
「わたし達の生きがい」でもあることに気付かされるのではないでしょうか。
最後に〜 なぜ今、「看取り」の価値を再発見するべきか
![老人と赤ちゃんが手を繋ぐ](https://static.wixstatic.com/media/nsplsh_12c6bedf419a4976bb2498cf585dbc56~mv2.jpg/v1/fill/w_980,h_653,al_c,q_85,usm_0.66_1.00_0.01,enc_auto/nsplsh_12c6bedf419a4976bb2498cf585dbc56~mv2.jpg)
現代では、医療技術の発展や生活様式の変化により、
自宅で家族を直接看取る機会が減少しているとも言われます。
一方で、「看取り」という概念の大切さは年々見直され、
特に2000年前後から、高齢化問題で在宅医療やホスピスの普及が進み、
死にゆく人を心身ともに支える専門職「看取り士」の重要性も高まっています。
「看取り」を経験することは、生と死の境界を考え直し、
「生きがい」を新たに発見するきっかけにもなるのです。
今月、初のお披露目となった対話会×ワークショップ
まさに「命」「死と生」と向き合う時間でした。
「あなたは、死にます。
いつか、は分かりません。
そのとき、なにを思い、どんな気持ちで迎えたいですか?」
そんな、“究極の問い” を前に、
何を感じるか、どんな風景が浮かび上がるか
自分自身と、仲間と、対話するひととき。
![いきがいみとりイベントバナー](https://static.wixstatic.com/media/8dd9fb_5903a3202dd14ac8a2031bfa9fb30d33~mv2.png/v1/fill/w_980,h_692,al_c,q_90,usm_0.66_1.00_0.01,enc_auto/8dd9fb_5903a3202dd14ac8a2031bfa9fb30d33~mv2.png)
今回の講座はすでに満席御礼で締め切ってしまいましたが、
次の機会にぜひ、ご参加ください。
「いきがいみとり」。
死を、生の一部として受け入れた時、
あなたの命も、あなたの世界も、
よりいっそう、鮮やかに、豊かになるはずです。
愛を込めて。
【IKIGAI研究員、募集中!】
![IKIGAI研究員募集バナー](https://static.wixstatic.com/media/8dd9fb_4f10ed7667524739bb9ef8bd90e47514~mv2.png/v1/fill/w_800,h_454,al_c,q_90,enc_auto/8dd9fb_4f10ed7667524739bb9ef8bd90e47514~mv2.png)
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