“苦集滅道”で読み解く、生きがいの育て方
- Ayaka Furukawa
- 4月22日
- 読了時間: 6分
更新日:5月6日
皆さま、ご無沙汰しております。
バンクーバー在住のライター、Ayakaです。
私はフリーランスのライター・インタビュアーとして活動する傍ら、バンクーバーで「花」に関わる仕事もしています。
「花」と「言葉」。一見、接点のないように思えるこのふたつですが、私の中では深く重なる部分があります。どちらも、目の前の「美しい一瞬」を切り取り、形にして届けるということ。そして、人の心を明るくし、前向きにする力があるということ。
アレンジメントをつくること、記事を書くこと——媒体は違えど、根底にあるのは「誰かの心にそっと寄り添い、幸せのきっかけを届けたい」という想いです。
そんな私の活動の根っこを辿っていった先に、ふと「コーチング」という言葉が浮かびました。そして今年1月から「ひふみプロコーチ講座」で本格的にコーチングを学んでいます。
『苦集滅道(くじゅうめつどう)』
講座の中では時折、仏教の教えに触れる時間があります。私はその時間がとても好きで、なかでも最近とても心に残った言葉があります。
それが、原始仏教「四聖諦(ししょうたい)」の中のひとつ—「苦集滅道」という言葉です。
苦とは、私たちが直面する苦しみや悩み、壁のこと。
集とは、その苦しみの原因を深く掘る。
滅は、その原因を解決したり、取り除く。
道とは、そこから開かれる新しい道、夢、理想やゴールなど。
つまり、「苦 → 集 → 滅 → 道」というプロセスを辿ることで、解決の道が見えてくる。これは「機械論的世界観」とも呼ばれ、感情のない対象(例えば工業製品など)にはとても有効な考え方です。
しかしこの考え方をそのまま感情を持つ人間に当てはめると、人は幸せになれません。
たとえば、夫婦関係を改善したいと思ったとき、「あなたのこの態度が問題」「君の言い方が嫌だ」と指摘し合い、日々注意して暮らすことを想像してみてください。
たしかに原因には向き合っていますが、その空気にはどこか笑顔がなく、心がぎすぎすしてしまいます。
だからこそ、お釈迦様は考えたのです。
「どうすれば、人は幸せを感じながら“道”を開くことができるのだろうか」

「集」を除き、「苦 → 道 → 滅」の順で思考する
お釈迦さまが辿り着いた答えは、機械的な原因追求とはまったく異なるアプローチをとることでした。
「集(=苦しみの原因を探る)」を除き、さらに「苦 → 道 → 滅」の順序で考えるということ。
この考え方は、「目的論的世界観」と呼ばれます。世界にはあらかじめ“完成された理想の姿”が存在し、すべてはその理想に向かって日々進化・成長しているという物の見方です。
たとえば、種から芽を出し、花を咲かせていく植物のように。あるいは、生きものが本来の姿へと育っていくように。そのため「生物学的世界観」とも呼ばれます。
つまり——
まずは「苦」、つまり今感じている苦しみや悩み、立ちはだかる壁の“現状”を静かに見つめ、受け止めます。ここで大切なのは、「なぜこうなったのか?」という“集”=原因追及には深入りしないこと。あくまでも、“今ここ”にある状況を把握することにとどめるのです。
そのうえで、「道」——すなわち、自分が本当に望む未来や夢、理想の在り方を思い描いてみます。どんな人生を歩みたいのか。どんな関係性を築きたいのか。どんな自分で在りたいのか。
するとその理想の姿に向かうために、何を手放し、何を選び、どんな一歩を踏み出すべきかという「滅」——具体的なアクションや方法が、自然と見えてくるのです。

たとえば、夫婦関係をより良くしたいと願うとき。まずは、現在のふたりの関係性を丁寧に見つめ、現状を把握します。そして原因の追究はしない代わりに、ふたりがこれからどんな夫婦関係を築いていきたいのかを、想像してみるのです。
――たとえば、休日に一緒に散歩に出かけるような自然体の関係。意見の違いがあっても感情的にならず、冷静に話し合える関係。あるいは、いつまでも付き合いたてのようなときめきを大切にできる関係。
私がこの教えを初めて学んだとき、心の底から「これを知れて本当に良かった」と思いました。
これまで私は何かを解決しようとするたびに、つい原因を突き止めることばかりに意識を向けてしまっていたからです。でも本当は、“どんな未来を叶えたいのか”という目的にフォーカスすることこそが、幸せな道を開く鍵だったのだと気づかされました。
「滅」の工程を「生きがい」に繋げる

この「滅」の工程を、“我慢”や“修正”といった厳しさを伴うものとして捉えがちですが、私はむしろここにこそ、自分の「生きがい」へと繋がる深いヒントがあると感じています。
そのためには、「苦 → 道 → 滅」という思考の順番を、自分の中に習慣として根づかせていくことが大切です。
悩みや問題の原因ばかりを追いかけて、その意識の向け先が“過去”や“他人”ばかりになってしまうと、気持ちは次第に重くなり、視野も狭くなってしまいます。
だからこそまずは、「苦」=いまの自分の状態を、冷静に見つめること。そして、その先に「自分は本当はどうなりたいのか?」という理想の姿「道」をまず描いてみること。
理想を思い描くことで、心は自然とわくわくし始めます。
そのわくわくに導かれるように、「滅」=その理想に近づくために手放すべきことや、取り入れたい習慣が見えてくる。
この「滅」は、単なる我慢や修正ではありません。むしろ、自分の夢や理想に近づくための、ポジティブで前向きな行動の積み重ねなのです。
そしてその先にふと立ち上がってくるのが、自分にとっての「生きがい」。
それは、何か特別な夢である必要はありません。日々の中でふと笑顔になるような、小さな喜び。大切な人との対話の中で感じるあたたかさ。誰かの力になれた瞬間に湧き上がる静かな充足感。
そうした日常の“ささやかな幸せ”が連なっていった先に、自分だけの「道」が生まれ、それがやがて“人生そのもの”になっていくのだと思います。
あなたにとっての「道」とは何でしょうか?

心が少し軽くなる瞬間、時間を忘れて没頭できること、人から「ありがとう」と言われてうれしかった出来事——そうした小さなエピソードのなかに、あなたが本当に大切にしている価値観や、生きがいの芽が隠れているかもしれません。
今、何か悩んでいることや、心に引っかかっていることがあったとしても、その「苦」を抱えながらも、自分が望む未来「道」に目を向けてみる。そして、その道に向かって「今、自分にできることはなんだろう?」と問いかけてみる。
ほんの小さな一歩でもいい。理想の自分に近づくために選んだその行動が、すでにあなたの「滅」であり、やがてそのプロセス自体があなたの「生きがい」になっていくはずです。
どんな未来を描きたいですか?
その未来に向けて、今日、あなたはどんな一歩を踏み出してみたいでしょうか?
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