「生きがい」と聞くと、
みなさんはどんなイメージが浮かびますか?
「リタイア後の楽しみ」
「老後をどう生きるか」
「生きがい」という言葉は、日本では未だに
歳を重ねた人々にとっての「新たな人生の目的や意義」
という印象が強いかもしれませんね。
しかし、日本人であるわたし達が
当たり前に感じ、考えている「生きがい」は
他の言語では直接的に対応する言葉がない概念「IKIGAI」として
特に2010年前後から、世界中で注目されています。
最初の火付け役になったのは、
2008年に発刊されたダン・ビュートナーの著書
『The Blue Zones: Lessons for Living Longer from the People Who've Lived the Longest(邦題『ブルーゾーン 世界の100歳人(センテナリアン)に学ぶ 健康と長寿のルール』)』。
著者は自身のプロジェクト
「ブルーゾーン(世界中の長寿健康エリア)」に関連する調査として、
特に沖縄に注目しました。
沖縄で暮らす人々の文化や
日常に深く根付いた概念「IKIGAI」こそが、
彼らの長寿と健康に寄与している、と。
彼は研究の中で
「単に長生きするだけではなく、
どのようにして意味のある充実した人生を送れるか」
という観点を提示し、
「IKIGAI」の重要性を世界に広めるきっかけになりました。
また、2016年に発刊された
ヘクター・ガルシアとフランセスク・ミラージェスの著書
著者は、実際に沖縄の長寿の里で暮らしながら
畑を耕す、仲間を大事にする、歌と踊りなど、
彼らの生活習慣、精神性を深く掘り下げ 「IKIGAI」の本質に迫りました。
この本をきっかけに
「IKIGAI」という言葉が「長寿と健康の秘密」としてだけではなく
「生きる意味と目的を発見する方法」として
さらに世界の人々が注目することになりました。
どちらの本も、世界中でベストセラーとなり、多くの言語に翻訳され、
今でもさまざまなメディアで取り上げられています。
なぜ、世界は「IKIGAI」に魅かれるのか?
その背景には、いくつかの時代的・経済的・社会的な要因があります。
1 健康とウェルビーイングへの関心の高まり
21世紀に入ってから、特に西洋社会で
健康やウェルビーイングへの関心が高まります。
経済的発展によって、物質的な豊かさが行き渡ると
人々は消費活動による“見せかけ”の充足ではなく、
より精神的・内的に充実した人生を送りたいと考えるようになりました。
単なる「長寿」ではなく
個人の成長やコミュニティとのつながりのなかで
「よりよく豊かに生きること」が重視されます。
そんな中で「IKIGAI」の概念が
長寿と幸福を実現するための重要な要素として注目されたのです。
2 日本文化への関心
さらにその流れは、
「ZEN」やミニマリズムなど、
日本の伝統的な価値観への国際的な注目にも繋がります。
「諸行無常」「もののあはれ」「一期一会」といった世界の捉え方は
単なるライフスタイルとしてではなく、
「生き方・あり方」「美学」として注目されました。
そんな中でピックアップされたのが、「IKIGAI」です。
3 高齢化社会への対応
多くの国で高齢化が進行する中で、
老後をどのように充実させるかは重要な課題となりました。
高齢化の問題が最も深刻な国である日本、
そんな日本に息づく「IKIGAI」という概念は、
世界中の多くのシニア層にとって、
リタイア後も充実した人生を送るための一つの指針となりました。
4 不確実な時代を生き抜く鍵
先が見えない、予測できない現代。
経済破綻、自然災害、病気、別離など
「起きた出来事」に左右され運命を呪うのではなく、
「生きる意味」を糧に、逆境を乗り越え
自己の成長に繋げていく。
常に先が見えない時代を生き抜くための「解毒剤」としても
「IKIGAI」は注目されました。
こういった背景から「IKIGAI」という概念は
今でも世界中で注目され、各方面で研究が進んでいます。
さらに、2024年の現在、ドイツでは、
2017年に刊行された 脳科学者・茂木健一郎さんの本
『Ikigai: Gesund und glücklich hundert werden』 (邦題『日本人だけの長く幸せな人生を送る秘訣』)が
再び18週連続でベストセラーを記録しています。
わたし達は今、なぜ、「IKIGAI」を求めているのでしょうか?
戦争、環境破壊、資本主義の闇、ニヒリズム、グローバルな課題から
人間関係の葛藤、未来への不安、無価値観、個人の悩みまで
あらゆる苦しみの根源は
人々が、生きることの意味=「IKIGAI」を
見失うことから始まる。
わたし達は、心のどこかで
そのことに気づき始めている。
国籍、文化、宗教、人生のステージに関わらず
「IKIGAI」は、わたし達の人生を支えてくれる「柱」であり
一人一人、「命同士」が手を繋ぐための 「かけ橋」でもあります。
だとしたら…
わたし達、一人一人が
それぞれの「IKIGAI」を取り戻し
それぞれの「IKIGAI」を中心として
生きること、働くこと、愛することを
見つめ直せたとしたら
わたし達の人生は、
どんな風に景色を変えるでしょうか?
【IKIGAI MEDIA LAB】では
社会、宗教、科学、教育、
さまざまな領域から「IKIGAI」の研究を深め
仕事、家族、人間関係、自己探求、
さまざまな場面で「IKIGAI」を実践していける
そんな情報と実験の場を提供します。
世界中、あらゆる分野に生息する
「IKIGAI」の点と点をつなぎ
この星を生きるすべての人が、
苦しみを解き、喜びを紡ぎ、
「生きる意味」を感じ、味わいながら
今日を、共に。
生きていけるように。
あなたの「IKIGAI」は、なんですか?
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